40代男性「歯に穴があいた。噛み合わせが悪くよく噛めない」神経を取らない虫歯治療後にジルコニアを被せ、噛み合わせを修正した症例

2023.11.01

治療前

治療前正面
治療前レントゲン
治療前下顎

治療後

治療後正面
治療後下顎

年齢と性別 40代・男性
ご相談内容 左下の歯(左下4番)歯に穴があいた。噛み合わせが悪くよく噛めないとお越しになられました。
カウンセリング・診断結果 拝見すると左下4番に大きな虫歯ができて歯が欠けていました。レントゲンでは神経近くまで虫歯が進行していることが判明しました。
また上下の歯を噛んで合わせると左下7番(奥から2番目の歯)以外の歯は口を閉じると当たっておらず、他の歯では噛めていない状態でした。左上7番を以前に失ったため左下7番が伸びだし、その後あごの位置が前にずれたことが原因だと判断しました。レントゲンから左下7番の手前側の骨がなくなってきているのはこの歯にだけ噛む力が集中した結果だと思われます。
最近はこの噛み合わせの状態だとおっしゃっているので、口を閉じる際に伸びだして邪魔になっている左下7番を低くすることで他の歯でも噛めるようにする必要があると診断しました。奥歯は左下7番だけが当たっているため、上下の前歯の先端同士の間に隙間が空いています。(治療前写真)
他の歯でも噛めるようになることは、左下7番の負担を軽減することにつながるため、骨の回復が期待できるかもしれないと考えました。
行ったご提案・治療内容 左下4番の虫歯治療では2つの選択肢があることをご説明しました。虫歯はすべて除去しその際に神経が露出した場合には神経を取る根管治療を行う通常の虫歯治療、大半の虫歯は除去するものの神経に近い部分はあえて虫歯を残しその部分の細菌を抗生物質により除菌し神経を残す治療の2つです。後者は神経が残るため歯の寿命が長くなるメリットがありますが、現時点ですでに神経が感染している場合は後になって痛みが出て神経を取らなくてはならなくなるデメリットがあります。確実性は劣りますが、現時点で神経を助ける唯一の方法です。

ご本人は歯の寿命を第一に考えたいのでリスクを承知で神経を残してみる除菌治療をお望みでした。ご希望に沿って虫歯除去と除菌治療を行い仮の歯をお入れして経過を観察しました。問題がなかったのでご希望によりジルコニアを被せることに決まりました。

また左下7番しか噛めていなかった状態を改善しないと咀嚼効率上不利です。またその歯だけに噛む力がかかるためその歯の寿命も短くなります。あごの位置が変わったことが一時的なものなのかも不明なため、一度左下7番の被せものを取り除き他の歯も噛める状態にして経過を見ることをご提案しました。

治療方針への同意が得られましたので、左下7番の被り物を取り除くと1本だけ出っ張っていた歯がなくなったため口を閉じると他の歯が自然と上下当たるようになりました。1本だけ当たっていた奥歯が低くなったため、治療前と治療後の正面の写真の比較で上下前歯の先端同士の隙間が少なくなっています。
患者様は驚き「これで噛める」とお喜びなられましたが、問題は新たに作る被せものをこの噛み合わせで作るべきか否かです。そのため、左下7番も他の歯が上下で当たる噛み合わせに合わせた仮の歯に置き換えて経過を観察しました。しばらくの観察期間中も患者様は「よく噛める」と肯定的であり、かつあごの関節や他の歯の問題が見られなかったことから、この噛み合わせで新たな被せものを製作することに決まりました。

その後左下4番・7番の歯型をお取りし、ジルコニアを歯に接着して治療が終了しました。(治療後の写真)

治療期間 約2か月
治療回数
費用目安 220,630円(除菌治療1本と仮歯を含む2本)
術後の経過・現在の様子 虫歯の進行を神経ぎりぎりで阻止できたため神経を失わずに済んでいます。
治療後は噛み合わせは落ち着いており、噛める食生活を取り戻されました。
痛い、しみる、穴が開いたなどご自身でわかる症状を待てば虫歯が相当進行してしまった後になるため、定期検診とメンテナンスをお勧めしています。
治療のリスクについて ・装着に際し、天然歯を削る必要があります
・硬い素材の場合、他の天然歯を傷つけることがあります
・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、ジルコニアが割れる可能性があります
・神経が感染していた場合には将来痛みが発生して神経を取る治療が必要になることが稀にあります
・一部の治療を除き、自費診療(保険適用外治療)です
クリニックより 抗生物質を用いた除菌治療は万能ではありません。年月を経て神経が痛んでくることも稀に起こります。除菌治療とともに左下7番の骨の回復程度も今後は経過観察を続けて参りたいと考えています。

年月と共に色々な事柄が変化していきます。人も例外ではなく、加齢以外にも癖(習慣)や指向色々なものが変化していきます。一度治療すれば今後一切の治療が必要ないのが理想ですが、時には今回のように噛み合わせが変わることもあり得ます。その時その状態に合わせていくのも一つの治療だと考えています。