80代女性「下の前歯の歯茎ができものができて腫れてきた」抜歯後に審美的な入れ歯を入れた症例
2024.05.27
治療前
この時点では確認できませんでしたが時々下の前歯の歯茎が腫れるとお見えになられました。
前歯の先端にヒビが入っていますが、それ以外の特段の現象はみられません。
その後経過をみていましたが歯茎が腫れたと再度お見えになり、歯茎表面のできものから細い棒を差し込むと歯の根の先周辺まで入っていきました。この歯に歯茎の腫れやできものの原因があることがわかりました。
治療中
根の中の神経の感染が原因であるため根の中の治療(根管治療)を行いました。
その後経過が思わしくないため当方より大学病院にセカンドオピニオンを行い、抜歯となりました。
抜歯により歯茎の腫れはなくなりましたが、歯茎が凹んでいます。この後の治療方針をご相談し審美義歯(エステティックデンチャー)を入れることになりました。
治療後
上顎の入れ歯の様な歯に引っ掛ける針金がない審美義歯を入れた状態です。針金の代わりに両隣の歯の表面にピンク色の樹脂で入れ歯を安定させます。
歯に引っ掛ける針金がないため、見た目にもすっきりとした印象です。
年代と性別 | 80代・女性 |
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はじめのご相談内容 | 下の前歯(左下1番)の唇側歯茎ができものができて腫れてきたとご相談を受けました。(治療前画像1と2) |
診断結果 | 拝見した当日は腫れやできものは一時的に治っていましたが、再度来院された時には下の前歯(左下1番)の唇側歯茎にできものと表現されている歯の根の部分からの膿の出口であるふくらみが確認できました。ふくらみの膿の出口から細い棒(レントゲンで白く写っている)を差し込んでレントゲン撮影すると根の周囲に黒く写る骨の破壊像が見られ、出口から差し入れた棒は根の先付近に到達しています。(治療中画像1) 歯の先端に細かなヒビ割れや歯先端の欠けからの感染の可能性は否定できませんが、明らかな虫歯はないため細菌の侵入経路は不明です。しかし歯の神経部分が何らかの感染を起こし、その感染が根の周囲の骨を破壊し、さらに歯茎にまで到達してふくらみを作っていると判断しました。 放置すれば感染は拡大し、他の歯にまで悪影響が及ぶだけでなく、この歯を失いかねません。根の中の治療(根管治療)により感染拡大を止め、歯を保存する必要があると考えました。 |
行った治療内容 | 本来神経が入っている管がレントゲンに通常は写るものですが、ご年齢によるものと推察しましたがほとんど写っていません。他の前歯も同様です。こうした場合、根の中の治療は困難がつきまといます。歯の内部の神経部分に器具が入りづらいためです。 しかし現状を改善するためには根管治療が必要であること、放置するデメリットをご説明しご納得が得られましたので根管治療に着手しました。ほとんど根の中の管が塞がっている状態でしたので、根の中の治療に2ヶ月間とかなり期間はかかりましたが、この状態で様子を見たいとの患者様のご希望もあり一旦は治療を終えました。 それから半年後に来院されたときに、歯茎のできものがなくなったり再発したりを繰り返す状態だと伺いました。通常の治癒過程を通らない違和感を感じ、他の何らかの原因があると考え当方からセカンドオピニオンをお勧めして大学病院の意見を聞くことにしました。 大学病院の見解は残念ながら抜歯という結果でした。大学病院で抜歯を受けられた後、今後のご相談をいたしました。歯が抜けたままでは格好が悪いため、何らかの方法で見た目を回復されたいとのお考えでした。(治療中画像2と3) ブリッジは両隣の歯を削る必要があることと、インプラントは外科手術が必要なため、入れ歯をご希望されました。すでに上の歯には入れ歯が入っており、入れ歯に馴染んでおられた経緯もありました。 上の入れ歯の針金が前歯に見えて外見上気になる。下の入れ歯は目立たない入れ歯にできないかとご相談を受けたため、審美義歯(エステティック義歯・ノンクラスプ義歯)をご紹介しました。 通常の部分入れ歯は、入れ歯を安定させ外れにくくするために残った歯に針金を引っ掛ける構造になっていますが、その針金が目立つため、針金を歯茎の色に近いピンク色の樹脂で作る入れ歯です。 メリットは針金の金属色がなくなり見た目がいい点ですが、使用していると経時的に針金の代わりの樹脂が変形して入れ歯が緩くなった際に調整ができない点と費用が掛かる点がデメリットです。金属の針金は折れない限り調整ができます。 まず一般的な入れ歯を作製しご不満があれば審美義歯をお作りになられることをご提案しましたが、どうせ作るならと最初から審美義歯をご希望されたため、治療計画を立ててご説明しました。 ご了解が得られたので抜歯から2か月半後に歯型と噛み合わせの記録を取り、次の回に入れ歯を仕上げる前の状態で仮合わせを行いました。歯型取りから1か月弱後に仕上がった審美義歯をお入れして治療は終了しました。(治療後画像1と2) |
このケースのおおよその治療期間 | 抜歯から約3ヵ月(入れ歯作製期間1か月弱) |
おおよその費用 | 171,600円 |
現在の様子 | 治療により、抜歯後歯がなくなって息がもれる、何となく落ち着かない、前歯だから格好が悪い、とおっしゃっておられたことが解消しました。 また食生活や日常生活は問題がなく、できれば避けたかった入れ歯の針金がなく見た目にきれいになりました。 現在は検診とメンテナンスでこの状態を維持されています。 |
治療のリスク | ・着脱式のため、食後の清掃が必要です・最初のうちは異物感があり、慣れるまで時間がかかる場合があります ・当初は入れ歯の裏側の粘膜に傷ができる場合があります |
クリニックより | 費用がかかることがデメリットですが、注視しないと下の前歯に入れ歯が入っていることが他人に知られない目ための良さが審美義歯のメリットです。 入れ歯の詳細は下記をご覧ください。 ・義歯の選び方 ・入れ歯 |