虫歯になる理由、虫歯にならない方法

虫歯予防のための基礎知識

虫歯を予防し虫歯と闘うには、まず戦う相手を知らなくてはなりません。
日々の忙しい時間を一部とはいえ割くのですから、むやみやたらに効果の低い対策をするのではなく、効率的な方法を知るためです。

虫歯の原因であるプラーク

口の中の細菌
「虫歯予防のために歯を磨きましょう」と言われて久しいため、虫歯は口の中に残った食べかすが原因で起きると思っておられる方がいらっしゃいますが、それは正しくはありません。
正しくは歯の表面についたプラーク(歯垢)と呼ばれる物質に含まれている虫歯原因菌の塊から産生される酸によって歯が溶かされたのが虫歯ですので虫歯の原因はプラークなのです。
ただし虫歯原因菌が活動し増殖するための餌となるのが食べかすですので、間接的に原因を作り出す元にはなっています。
またプラーク=食べかすでもないのです。
ですから虫歯を予防するためには歯磨きで歯から原因であるプラークと、細菌の餌になる食べかすを取り除くことが重要になってきます。

歯を100%綺麗に磨いても歯の表面に付着した細菌が徐々にお口の中の栄養を得て増殖し、1日でプラークができてしまいます。
その1mg中に多種多様な細菌が1億以上生息しており、その中の虫歯原因菌の増殖過程で出す酸で虫歯に、また歯周病原因菌が出す毒素で歯周病になります。
2つの病気共、原因菌は異なりますがどちらも細菌による感染症です。従って口の中の細菌の数を減らす、細菌に餌をやって元気にしない、細菌に負けない免疫力をつけることが共通の予防策になります。

虫歯に関係する食生活とは?

砂糖が虫歯の原因になることは良く知られていますが、食べ物に含まれている糖の濃度や食品の粘着性や、食べている時間、頻度が虫歯に大変関連が高いことが分かっています。
このような何をどう食べるかという食生活が虫歯に大きく関連しているのです。
どうして虫歯になるのかそのメカニズムを見てみましょう。
虫歯の脱灰
まず食事の中の糖がプラーク(歯垢)と呼ばれる細菌の塊に供給されます。細菌とその栄養になる糖の二つが合わさると細菌が酸を出してphが酸性に傾きます。
phがエナメル質で5.5,象牙質で6.0になると歯のミネラル(カルシウムやリン)が溶け出します。
これを脱灰といい、脱灰が起きるphを臨界phと言います。 臨界phを下回ると歯が溶け、虫歯になります。 これが虫歯になるメカニズムです。

虫歯と闘う免疫力

私たちの身体には病気と闘う力が備わっています。食事の中の糖がプラークに供給されると虫歯菌から酸が産生されますが、唾液の作用(緩衝作用)が30分から60分かけてphを元に戻してくれます。さらに歯質がわずかに酸に侵された程度であれば、唾液の修復作用により元通りに回復してくれます。
こうして我々の歯は酸で簡単には溶けないように守られています。つまり食事をして酸が出て、歯が溶け、唾液の力で元に戻るというサイクルを日々繰り返しているのです。

虫歯になる理由

どうしてこのような虫歯から歯を守る身体の防御壁が破られるのでしょうか。
治療前

磨き残したプラークの存在

糖の濃度が高い場合や食品の粘着性が高い場合、「だらだら食べ」など飲食の頻度が多い場合はphが下がり虫歯になりやすくなります。

食生活に潜む問題

数年ごとに虫歯治療に通っておられる虫歯の多い患者さんが先日お見えになられました。お話しを伺うと、仕事中いつも砂糖入りコーヒーを飲む習慣をお持ちでした。
虫歯菌の大好物である砂糖が絶えず供給されていたことで唾液の緩衝作用や再石灰化が常に間に合わず、仕事中常に歯が溶けて虫歯が進行していたのです。
これが虫歯の頻度の高さと数の多さにつながっていました。歯を磨いているにも関わらず、こうした何気ない食生活が虫歯に関係していることがあります。

虫歯の予防方法

虫歯予防の基礎であり王道のブラッシング


ブラッシングの重要性ご両親から「歯を磨きなさい」と言われたり、歯医者さんで「歯磨きは大事ですよ」と言われたことがあることでしょう。
歯磨きやフロス(糸ようじ)がしっかりできれば虫歯の原因であるプラークを取り残すことがなく、歯科治療は必要ないからです。
丁寧に歯磨きをする人の口の中の細菌数が1000~2000億個なのに対して、ほとんど歯磨きしない人の細菌数は1兆個にもなります。

プラークはネバネバした水に溶けない不溶性グルカンという糖でできています。これがまるで城壁のように外からの抗生物質や消毒薬から内部の細菌を守り、さらにしつこく歯の表面にくっついているためうがい程度では取ることができません。とても厄介です。除去するには歯ブラシなどで機械的にこすり取るしか方法はないのです。ですから毎日行う歯磨きが大事になってきます。

しかし歯と歯の間、歯と歯茎の境目、歯の表面の細い溝など、歯ブラシの毛先が入り込めない場所が口の中にはたくさんあります。歯周病で歯茎が下がった場所や歯並びが悪い場所なども磨きにくいところです。こうしたブラシが当たらない、また不十分になりやすい場所が実際に虫歯の頻度が高い場所です。
さらに歯磨きを丁寧にやっても実は58%しかプラークを除去できていない問題があります。しっかり磨いているつもりでも虫歯になってしまうのはこのためです。そこで歯ブラシと共にデンタルフロスや歯間ブラシなども必要になってきます。

正しいブラッシングの仕方

虫歯や歯周病にならないためには歯の隅から隅までブラシが当たり、プラークを取ることが大事です。
虫歯や歯周病にかかる方は自己流歯磨きや、あっちこっち歯ブラシを動かす気まぐれ磨きをされている方が多く、磨き癖や苦手な所などでその方特有の磨き残しがあります。

歯磨きの順番を決める

歯磨きの順番
私がお勧している方法をご紹介いたします。奥歯と前歯の表側・裏側・かみ合わせ、合計で9ブロック(図の色分け参照)、上下の口全体で18ブロックに分けします。
磨き癖や気まぐれ磨きを防ぐために、このブロック毎に順番に歯みがきをしていき、終わったら次のブロックに移るという方法です。
これにより歯ブラシが一回も通らない場所をなくすことができます。

自分の磨き癖を知る

プラークの赤染
磨き癖や苦手な場所には個人差があります。その不得意の場所を知ることで磨き残しをなくし、虫歯と歯周病と闘うことができます。
その方法が歯磨きの苦手な方にお勧めしているプラークを赤く染める歯磨きチェックです。
赤く染めて磨き残し場所を知ることでご自分の磨き癖がわかり、改善することで虫歯や歯周病を防ぐことができます。
一度ご自身の歯磨きを見直されてみてはいかがでしょうか。
高岡歯科医院はそのお手伝いをさせていただきたいと思います。

歯ブラシの動かし方

歯みがきをする女性
歯ブラシを5~10mm小刻みに動かして歯1~2本ずつ磨いていきます。20回前後往復するのが目安です。
力の入れ方が重要で、強過ぎると歯や歯茎が傷みますので毛先が広がらない程度(150~200g)の軽い力で磨いてください。
これによりブラシが当たっていても汚れが落ちないということが少なくなります。

前歯の裏側の湾曲した場所や凹凸のある歯並びの場所は歯ブラシを縦に動かすと全ての歯に歯ブラシの毛先を当てることができます。
歯ブラシのつま先やかかとをうまく使って磨きましょう。
他の歯より一段下がった背の低い歯は、正面からでなく斜め45度から歯ブラシを当てると磨けます。
歯ブラシを45度に傾け、歯と歯茎の境目に当てて歯磨きをすると歯周病予防や治療に効果的です。
1ブロックの歯みがきにかかる時間は15~20秒位ですから、お口全体の歯みがきにかかる時間は4~6分です。

ここには一般的な方法を記載しましたが人それぞれ歯並びや歯茎の状態は違うものですから、実際にはお勧めする磨き方や道具が異なってきます。
どうせするなら自己流で通すより、あなたにとって最適な正しい方法が効果的です。歯科衛生士がご提案させていただきますのでご相談ください。

歯ブラシの持ち方

歯ブラシの持ち方
物を握るように掌で歯ブラシを持つ方法もありますが、写真のように鉛筆を持つように歯ブラシを持つと細かな動きのコントロールがしやすくなり、力の入れ具合が弱くなって歯と歯茎を傷めることがなくなります。しっかり汚れを取ろうとしてグーで歯ブラシを握り、力を入れ過ぎて歯茎を出血させて傷めたり、歯を過剰に摩耗させて歯がしみるのを防いでくれます。

知って得する予備知識

正しい歯ブラシの選び方


大きい歯ブラシの方が一度に広く磨けて効率がよく歯みがき時間の短縮につながるように思えるかもしれませんが、口の中は狭くその狭い中でさらに歯ブラシを動かすものですから、大きい歯ブラシは動きが悪く、不適当です。口に歯ブラシを実際に入れてみて動かしにくいものはあなたに合った歯ブラシではありません。
歯ブラシの適正な大きさは成人で約2cm程度、口の小さい女性や子供ではそれ未満のものをお選びになるといいでしょう。

また毛の材質は動物の毛よりナイロン製が衛生上お勧めです。
歯ブラシの毛の硬さは、一般的には「ふつう」を選んでください。
汚れをしっかり取ろう、硬くないと刺激が少なくて磨いた気にならないとお考えの方がいらっしゃいますが、硬いブラシの毛は歯を摩耗させたり歯肉を傷つけやすいのでご注意ください。

食べたら歯を磨く習慣を

食べる女性
食後数分でプラーク内の細菌が糖分を代謝して酸を出すため、歯の表面のカルシウムやリンなどのミネラルが溶けだします。
唾液の働きで酸を中和するまでの約40分間が虫歯危険時間帯です。
また時間と共にプラークは除去しにくくなるため、「食べたらみがく」ことがポイントです。
食事が終わって時間がたてば汚れが取れにくくなるため、その都度食器を洗うのと同じです。

寝る前に歯を磨く

歯を磨く女性
口の中の細菌と闘う免疫の中で重要なのが唾液です。唾液には汚れや細菌を洗い流す自浄作用と抗菌物質が含まれています。
しかし寝ている間は唾液の分泌量が低下するため、細菌と闘う力が減少してしまいます。
味方が弱くなるので敵も弱くする目的で「寝る前に歯をみがく」こともポイントです。
食後の3回と就寝前の歯みがきをお勧めしますが、時間的に無理な場合は可能な食後と就寝前にされてみてはいかがでしょうか。

歯ブラシは定期的に交換する

毛先の開いた歯ブラシ
図のように歯ブラシを裏返して背中(柄のほう)から見て柄の陰にブラシ隠れず見えるようなら毛先が開いています。
毛先が花びらのように広がっている歯ブラシは、効率が悪いだけでなく歯肉を傷つける可能性がありますので交換時期です。
まだ毛先が開いていない場合でも、あなたに合ったものを毎月取り替えることをお勧めいたします。
見た目にはまだ綺麗でも雑菌が繁殖することとブラシの弾力がなくなり清掃効率が落ちるためです。
ご自分にどんな歯ブラシが合っているのかご不明な時は、歯の状態や歯並びに合わせて歯科衛生士があなたのMyブラシをご提案させていただきます。

意外と知られていない歯磨きペーストの選択

歯ブラシ
臨床で「どんな基準で歯磨きペーストを選んでいますか?」と伺うと、「なんとなく」や「コマーシャルでやっていた」などあまり根拠のないお答えをよく耳にします。
虫歯予防において重要なのは歯磨きペーストのフッ素の濃度です。フッ素は再石灰化(酸で溶けた歯の表面の修復)を助けたり、フッ化カルシウムやフルオロアパタイトを生成して虫歯菌の出す酸で歯が溶けにくくする効果があります。その結果虫歯予防になるのです。
厚生労働省の定める濃度が2017年に改定され、歯磨きペーストのフッ素の濃度の上限量が1000ppから1500ppmまで引き上げられました。
WHO(世界保健機構)では歯磨き粉のフッ素濃度が1000ppm以上では、500ppm増える度に6%虫歯予防効果が上がるとされています。
虫歯予防の観点から従来の濃度ではなく、1500ppm(製品の表示は1450ppm)の歯磨き粉を使われることをお勧めいたします。

普通の歯ブラシと電動歯ブラシ、どっちが良い?

音波ハブラシ
歯ブラシには手で磨く普通の歯ブラシと電動歯ブラシがあります。さらに電動歯ブラシには歯ブラシが回転や前後に動くものと歯ブラシは動かず音波振動で毛先だけが非常に細かく振動するタイプとに分かれます。当院では音波ブラシをお勧めしています。
音波歯ブラシは基本的には通常の電動歯ブラシと同じようにブラシでプラークを除去しますが、音波によりブラシの毛先の周囲2mm程度まで汚れを落とすことができ、歯と細菌のつながりも破壊します。また一般的な電動歯ブラシの強制的な動きがないため、軽く歯に当てれば歯と歯茎を傷める心配もありません。

超音波ブラシは振動数が多いため電動歯ブラシと同じく歯の表面をこすって動かして使います。一方音波ブラシは歯の表面に当てるだけでいいという特徴があります。このように使いこなしが難しくなく、歯磨き効果が高いため、当院では音波ブラシをお勧めしております。

こうした機械式の歯ブラシは普通の歯ブラシより重いものです。5分10分と磨く場所を意識しながら動かし続ける間、その重さに疲れたり負担になるようなものは、実際の負担だけでなく歯ブラシを丁寧に仕上げる気持ちの上でもマイナスになり、あなたにとって適したものとはいえません。こうした点を考えて電動歯ブラシを選んでいただきたいと思います。

歯の予防とキシリトール

キシリトールガム
キシリトールは砂糖の代わりに使うことのできる天然の代用甘味料です。キシリトールは実は虫歯が出来るのを抑制します。
虫歯菌はキシリトールを餌に出来ないので虫歯にはなりにくいのです。
さらにキシリトールは虫歯菌が砂糖を分解する酵素の働きを抑制して、酸を出しにくく変えてしまいます。
またキシリトールには酸を中和させる働きがあり、虫歯菌が出した酸を弱める働きがあります。
虫歯ができるのはプラークの中で虫歯菌が酸を出し、その酸がプラークによって流れ出さないように守られるからです。
キシリトールの最大の有益性は虫歯菌にこのプラークを作らせないことです。虫歯発生のメカニズムを根底から覆す働きがあります。
これらの結果として虫歯になりにくくすることができます。
上の画像はキシリトールを多く含んだガムです。一般的なガムには少量しか入っていませんので、虫歯予防を考えるのであれば高濃度配合の商品をお選びください。
多量に摂取するとお腹が緩くなることもありますのでご注意ください。

最新の虫歯予防について

唾液検査
歯質が弱い家系だとあきらめていませんか?
毎日丁寧に歯みがきをしているのに虫歯になる人がいらっしゃる一方で、あまり歯みがきをしていないのに虫歯になりにくい人がいらっしゃいます。不公平な話ですが、事実です。これは遺伝的なものでしようがないこと・・・とあきらめるのは早いのです。

歯磨きをしても虫歯になる人と歯の遺伝虫歯になりやすい人の口の中にはなりにくい人に比べて、虫歯をつくる悪玉菌が多かったり、唾液の能力、食生活などに違いがあり、これらが虫歯発生率を大きく左右します。この対処をすることによって、悪玉菌の減少や虫歯リスクの減少が可能になってきました。

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