セカンドオピニオンについて

セカンドオピニオンが求められる背景

ご説明
正確な現状把握、治療方法の正当性、自分にとっての治療選択肢の有利性や将来的メリットなどは専門知識と経験値が必要な事柄です。
歯科医のたどってきた道によってもこうした事柄が違うため、歯科医の中でも微妙な部分では判断が分かれることがあります。

私も歯科以外の事に関しては皆さんと全く同じです。
私が病気になってネット情報や付け焼刃の知識程度の私が歯以外の病気の説明を受けても担当医と同じレベルで理解することは到底不可能でしょう。
しかし私も皆さんと同じ状況に立てば何かの決定をしなくてはなりません。
しかし様々な情報がある中で自分の病状に合った正しく役立つ情報とは何か、どのような判断基準が適切なのかも分からない状態では決定のしようがありません。
また自分が疑問に思ったことや不安そのものが正しいのか、それすらも分かりません。病気であること、知識や経験がないこと、すべて弱者なのです。

セカンドオピニオンとは

治療説明
その状態でも今の診断や治療方針などに理解と納得ができている場合は問題はないのですが、そうでないのであれば第三者の専門家の意見を聞いてその疑問や妥当性をご自身で判断するのがセカンドオピニオンです。治療を受けるためでなく、納得をするための制度です。セカンドオピニオン=転医ではありません。
別な意見を聞くことは判断の幅が広がることですし、同じ意見なら理解と納得が深まります。
お気持ちの整理に役立つだけでなく、場合によってはあなたの知らなかった新たな方法が見つかるかもしれません。
時間が経てば経つだけ病気は進行していきます。悩んでいても解決しないものですから早く歯を守るための第一歩とお考え下さい。

セカンドオピニオンの前に

インプラント痛い
患者さんと医療人双方とも人間です。場合によってはその時の状況などにより説明・相談・聞き取り不足や勘違いなどが起こることがあり得ます。
こうした不足分などが原因であればお互いのコミュニケーションで解決することができます。
歯科医側が気づいていないのであれば、今のお気持ちを正直に表現されてみてはいかがでしょうか。
例えば治療の選択肢、治療の進め方、疑問や不安などを納得がいくまで今の主治医とご相談されることです。
そこで解決できればお互いに幸せですし、もしそれでも解決できなければセカンドオピニオンという道もあります。

セカンドオピニオンのメリット

インプラント治療前レントゲン写真
先ほど述べた判断の幅の広がりや理解と納得を得られることが最大のメリットです。
また歯科医にも判断が分かれる場合があるとお話ししましたが、違う判断がご希望に沿った内容になる可能性もあります。
例えば当院はできるだけ歯を削らず、神経を取らず、歯を抜かない方針を取っているため、他院で抜歯を勧められた症例でも状況によっては抜かないで済ませられたケースもあります。こうした方針は治療計画にも影響することがあります。

この世の万物全ての選択にはメリットとデメリットがありますが、何を優先して判断するかによって手段や結果が変わるものだと考えています。
そうした何を基準に判断するかを知る上でもセカンドオピニオンを受けるメリットはあると思います。

歯科医側にもメリットがあります。
患者さんが疑心暗鬼ではなく納得の上治療が進められることは、お互いに同じ方向を向いて協力し合ってゴールに向かえることです。
そのため治療がスムーズに進み治療結果もよくなることが多いのです。

代表的なセカンドオピニオン

代表的なご相談内容をいくつかご紹介いたします。

他院で抜歯といわれたが抜かないで残す方法がないか

治療前
歯を抜くことは誰でもできるだけ避けたいものです。何とか残すことができないかとご相談を受けることがあります。
検査結果から今回は何とか残せたケースもあれば、残念ながらそうでないケースもあります。
当院はできるだけ抜かないで残す方針を取ってはいますが、それでも残念ながら現代医学にも限界があるからです。
仮に結論は同じでも、ご本人が納得できるところまでお話しができていないケースが多いように感じています。
参考記事「歯を抜く,抜かないの基準

他院の治療方針に疑問を感じるが、方針に間違いはないのか?他の方法はないのか?

医学的に自明の理である場合はどこでも同じ話になると思いますが、同じ歯科医でもたどってきた道のりや経験値が異なります。
人が違うため微妙な部分では考え方が異なる場合があります。
また治療の選択肢はいくつかあることが一般的です。
それぞれのメリット・デメリットをお話ししながら何を重視してその中から選択することがご本人のご希望に最も近いのかを一緒になって考えるプロセスが不十分なケースが残念ながら散見されます。その時のお互いの状況によるものではないかと感じています。

他院での説明に納得がいかない、説明がよく理解できない、このまま治療を進めるのが不安だ

説明不足とコミュニケーション不足が原因になって、ご本人が十分理解と納得を得られていない中で治療がスタートすることへの不安や不満だと考えます。
もしかすると歯科医側は説明をしたと思っているものの、それが患者さん側に十分納得がいくまで伝わっていないのかもしれません。
まず理解・納得できていないことを先生にお伝えになってみてはいかがでしょうか。そこで解決できるかもしれません。

他院での治療内容に不安がある。なかなか良くならない

治療自体の問題よりも、原因の特定に問題が多いように感じています。
症状を起こす原因は単純でなく、色々な角度から検証しないと原因が判断できないケースも多々あります。
また漫然と同じ治療を繰り返すのでなく何かおかしいと感じるセンサーを常に働かせておくことが大切だと長い臨床の中から感じています。

セカンドオピニオンでお見えになられる方々を拝見していると、このような治療内容に関わるもの、治療方針に関わるもの、説明不足によるものが多いように感じています。

最後に


歯科医の意見の違いや判断の違いは、治療と歯に対する考え方、それまでにたどってきた臨床経験、治療と情報の変革にどれだけアップデートしているか、歯科医の性格など様々な事柄の総合から生まれるものだと思います。特に考え方、自分の臨床を過去にさかのぼって見つめ直すこと、治療法の引き出しの多さが関係していると私は考えています。

新しもの好きの性格が幸いして最新の治療や機器を取り入れる抵抗がない反面、何事も疑ってかかる慎重さから実績のないものを臨床応用はしないできました。
そして愚直であっても省略せずセオリー通り行えばほとんどのケースでは結果がついてくることも長い臨床から学んできました。

例えばなかなか良くならないとセカンドオピニオンを求められる歯の内部の根管治療があります。
歯科治療で最も成功率の低いといわれている治療の一つでありながら、一般的には保険点数が低く手早く済ませられる傾向にあります。
しかし時間と期間をかければそれなりの結果がついてきます。他院で抜歯を宣告された内の何割かはまだ現役で噛めています。
これらは最新の治療の結果ではなく、地道にすでに確立した治療法を実践しただけなのです。

人生は選択の連続だといわれていますが、選択肢があることすら知らなければ選ぶことができないと思います。
選択肢それぞれにメリットとデメリットがあるのが常ですから、そうした情報と歯科医の経験値からのアドバイスを参考にしてご自分の優先順位を元に判断できるところまでお付き合いすることが10年先でお互いに後悔しないために大切だと私は考えています。

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