歯科レントゲンの目的・種類・被ばく量・安全性

歯科のレントゲンについて

親知らず
レントゲン撮影は歯の健康状態や病状を確認するための必要な検査です。
X線が吸収される歯、骨、金属などの硬い物質は白く写り、一方で歯茎、粘膜、筋肉などの柔らかい組織は黒く写ります。
虫歯菌で溶かされて柔らかくなった虫歯も黒く写ってきます。
根の先の病巣、歯周病で破壊された骨も柔らかいため黒く写ってきます。
歯科医はこうした本来と違う白黒濃度の変化や大きさ、形などを観察して病状を判断しています。

どのような時にレントゲン撮影をするか

インプラント治療前レントゲン写真
レントゲンは直接目では確認できない場所の状態を知るのに用いられます。
例えば虫歯の存在や大きさなどの確認、歯周病などで破壊されたあごの骨の状態、根の先にできた病巣の確認、歯や根のヒビや割れの確認など多岐にわたります。
こうした病気は主に細菌感染で起こるため、目では直接見えない細菌の存在を破壊された組織の画像から判断することができます。またその病状の進行状態も知ることができます。

例えば神経が細菌に感染していることは実際に神経を取り出して顕微鏡で確認するしか方法がありませんが、神経が感染して(腐って)細菌が根の先のあごの骨にまで達すると、あごの骨が溶けてレントゲンで黒く写ってきます。
その画像を見て神経が感染して死んでしまっていることがわかるのです。

歯科レントゲンの種類

歯科で一般的に使われるレントゲンは主に3種類あります。

1.デンタルレントゲン

治療前レントゲン
歯3~4本分の局所を撮影する2D(平面的)レントゲンです。
局所の病状や状況を詳細に調べる時に使います。
最も画像が鮮明であるため診断には有用ですが、撮影エリヤが限られています。

2.パノラマレントゲン

治療前レントゲン
上下左右お口全体の歯やあごの関節を撮影する2D(平面的)レントゲンです。
画質はデンタルレントゲンには劣りますが、撮影範囲が広く一度の撮影でお口全体が把握できるため、全体的なスクリーニングや他の歯との位置関係の把握、上顎洞・下歯槽菅、顎関節など歯周囲の広範囲の異常の確認などに使われています。

3.CTレントゲン

左上7番抜歯前CT
歯やあごの骨を立体的に撮影する3D(立体的)レントゲンです。
デンタルレントゲンやパノラマレントゲンは平面的な画像になります。
平面のレントゲンでは奥行きが無いため、知りたい情報以外の他の情報と重なり局所の正確な情報が読みとれません。
これが立体(3D)のCTになるとあらゆる方向から観察できるので歯や骨の状態がより正確に診断できます。
CTを撮影して初めて原因が判明することもあります。
必要な症例では情報の正確さが格段に向上し、診断や治療方針に非常に有用です。
近年で最も歯科の進歩に貢献した機材といっても過言ではないでしょう。
原因が特定できない物やなかなか治らない物、インプラントなど安全性の確保が必要な治療にはとても有効です。

レントゲン撮影の被ばく量

レントゲンも薬と同じく効果と副作用があります。
その意味で無意味なレントゲン撮影はするべきではありません。必要がある場合にだけ行う検査です。
地球上で太陽など宇宙から浴びる線量は0.4 mSv、大気から1.2 mSvであり、私たちは全く浴びていないものでもありません。
無意味に怖がるものでもないのです。
人体に悪影響が起きる年間の限界量は200 mSvとされています。
被ばく表
被ばく量はデンタルレントゲン(0.01 mSv)が最も少なく、パノラマレントゲン(0.03 mSv)、CTレントゲン(0.1 mSv)の順に被ばく量は増加します。許容量からするとデンタルレントゲンは20,000枚、パノラマレントゲンは6,666枚、CTレントゲンは2,000枚となります。
デンタルレントゲンは確認できる範囲が狭いため、お口全体を撮影した場合にはパノラマレントゲンの方が被ばく量が少なくなります。
CTレントゲンは比較的被ばく量が多くなりますが、他のレントゲンでは得ることのできない貴重な情報を確認できることと、比較的に多いといっても0.1 mSvと限界量の20000~2000分の一の微量ですのでご安心ください。
この線量は東京~ニューヨーク間を飛行機に乗って浴びる線量(往復で0.4 mSv)より少ない線量なのです。
それでもCTは通常は撮影することはなく、必要な時にだけ撮影をお勧めしています。
歯科レントゲンの被ばく量について

レントゲン撮影頻度

カレンダー
目視で見た状態だけでは判断できない場所を確認することがレントゲン撮影の目的です。
そのため治療中は必要と思える場合は撮影をご提案します。
治療後も予定通り治療が完了したか、治療結果確認のために撮影することがあります。
また年に1回は定期歯科検診の一環としてお勧めしております。
過去の病状の変化確認が必要な方、虫歯や歯周病の進行速度が早い方、人工物であるため無症状なことが多いインプラントが入っている方などは場合により半年に1回をお勧めしています。

妊娠中のレントゲン撮影

妊婦さん
通常は問題とならない線量であっても、感受性が高い胎児への影響を考えて検診では撮影を避けることが当院では一般的です。
しかし妊娠中であっても病気の治療が必要である場合は、お腹と上半身の防護エプロンを二重にして撮影することをご提案することがあります。
母体が感染すれば血流により細菌がお子さんにいかない保証がないことや、出産直後は歯科医院への受診が困難なため、お母さん自身の食生活や健康と体力に支障をきたす恐れがあるためです。

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