噛むと痛い

噛むと痛い原因

歯が痛いと反対側で噛んでも食事に支障をきたすだけでなく、口を閉じて歯を合わせるだけで痛みを感じるようになると苦痛の時間の連続、いつも歯のことを考えさせられ憂鬱な毎日を過ごすことになります。
その噛むと痛い原因の多くは痛む歯を支える周囲組織の炎症です。その歯の周囲の炎症を引き起こす主な原因と対処法をご説明いたします。

目次

食べ物が詰まって噛むと痛い

こんな些細なことで噛むと痛みが出ることに驚かれるかもしれませんが、日常臨床でよく目にします。歯同士の間に線維性食物などが詰まると歯は無理矢理押し広げられます。噛む時には最大ご自身の体重程度の力が歯にかかりますので、詰まったものが少量でも歯にはかなり強い力が持続的に加わるため痛みが出ます。この現象は歯には全く問題がない場合、ほんの少し歯と歯の間が空いている場合、小さな虫歯があり隣の歯との間に食べ物が詰まりやすい場合などに起こります。この痛みの特徴はデンタルフロスや糸ようじで詰まった食物を取り除けば痛みが短時間で消えることです。
処置としては、稀にしか詰まらないのであれば様子を見てもいいでしょう。しかし頻繁に詰まるのであれば虫歯や歯周病に罹りやすくなるため治療をお勧めいたします。治療法は詰まる場所やその歯の状況によってお勧めする治療が異なりますので医院でご相談されるといいと思います。

虫歯で噛むと痛い

虫歯で開いた穴に食べ物が入って痛いケースは、先程お話しした食べ物が詰まって痛い場合と、虫歯がある程度進行していて歯の内部の神経を刺激して痛みを感じる場合があります。放置すれば次でお話しする根尖性歯周炎に進行して最悪の場合歯を失うこともありますので早急に治療をお勧めいたします。
処置法としては、虫歯治療(虫歯を削り取った後に開いた穴に詰める治療)、虫歯が進行して歯の内部の神経の感染がある場合は根管治療を行いその後に被せ物治療が必要になります。

根尖性歯周炎で噛むと痛い

根尖性歯周炎で噛むと痛い時は、歯の内部や根の周囲の歯周組織が細菌感染による炎症が起きています。根尖性歯周炎は虫歯からの細菌感染により起こります。また外傷により歯の欠け・割れなどにより歯の神経が口の中に露出したための細菌感染、過去に歯の神経治療を受けた歯の再感染でも起こります。どの原因であっても、細菌感染が歯の内部の奥底まで進行していたり、さらに進行して歯の根の外側(あごの骨)まで感染が拡大している場合に噛むと痛い症状が起こりますので、単に虫歯で歯が痛い状態より重症であるとお考え下さい。この状態からさらに悪化すると歯茎が腫れ、最悪の場合は歯やあごの骨を失い回復不可能な状態になることがありますので、できるだけ早く受診をお勧めいたします。

根尖性歯周炎で噛むと痛い時の治療法

細菌感染が歯の内部(神経)や根の先のあごの骨の奥深くまで進んでいますので、最初は抗菌剤等の内服薬を服用しながら歯の内部の治療(根管治療)で炎症を緩和させ、痛みをなくします。次に歯の内部の細菌感染した歯質や組織を取り除き、内部を消毒して無菌化した後に歯の内部を薬剤で封鎖します。その後虫歯で空いた穴を詰めたり歯に被せ物をすることで再び噛むことができるようになります。しかし重症の場合は抜歯せざるを得ない場合もあります。
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歯周病で噛むと痛い

噛むと痛い原因が歯周病で起こっているケースは歯周病が重症化している状態です。歯周病が歯茎の炎症だけで収まらずにさらに進行して歯を支える組織(歯根膜やあごの骨)にまで感染が及び炎症状態になった結果、噛むと痛い症状が出現します。一度溶けてなくなったあごの骨は基本的には元に戻らず、歯を支える骨が減少すれば歯がぐらつき、硬いものが噛めない、噛むと痛いなどの症状がこれから先も続き、現在や将来の食生活、歯の寿命にも関わってきます。これは後戻りできない一方通行の身体の破壊ですから、一時も早く歯周病の進行を止めなくてはなりません。早期の受診をお勧めいたします。

歯周病で噛むと痛い時の治療法

痛みや腫れなどの症状がひどい場合は、初回は抗生物質や消炎鎮痛薬を服用して症状の緩和を図ります。これで治る訳ではありませんので、症状が少し楽になった時点で本格的な歯周病治療に入ります。
噛むと痛い症状はかなり歯周病が進行している状態ですので歯石を取るなど初期治療だけでは解決せず、歯の根っこの表面の感染物質を取り除きながら洗浄と消毒を繰り返していきます。噛む力を十分負担することができない状態ですので、歯に加わる力を軽減するため噛み合わせの調整が必要な場合もあります。
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上顎洞炎で噛むと痛い

上顎洞とは鼻の横と目の下付近にある上あご内にある空洞で、鼻腔とつながっています。上顎洞炎はこの上顎洞が炎症を起こした状態です。上顎洞炎は、鼻炎や蓄膿症、風邪などから鼻腔を通じて発症する場合と、虫歯などから歯の神経が細菌感染しその感染が上顎洞に及んで発症する場合があります。前者の場合は歯自体には問題はないのですが、感染が歯の根の周囲に及ぶため噛むと痛くなります。後者の場合は先に述べた根尖性歯周炎と同じです。
噛むと痛い以外の症状は、鼻水、頭痛、うつむいたり飛び跳ねると目の下あたりに響く、などがあります。

上顎洞炎で噛むと痛い時の治療法

炎症を緩和するため抗菌剤の服用、虫歯当歯由来の感染であればその歯の根管治療、鼻腔由来であれば耳鼻科へのご紹介を行います。

咬合性外傷で噛むと痛い

咬合性外傷とは上下の歯同士の噛み合わせによる損傷をいいます。2つのタイプがあります。歯や歯周組織の問題がなく、歯軋り・食いしばり・噛みしめ癖・歯をぶつけた・硬いものを噛んだ、など歯に無理な力が加わったことが原因で起こる一次性咬合性外傷と、歯周病で歯を支える組織が弱体化したことが原因で通常の食事程度の力で起こる二次性咬合性外傷があります。共通するのは歯周組織の損傷です。その損傷により噛むと痛みがでます。突き指のような状況だとお考え下さい。
一次性咬合性外傷で軽症の場合はその歯に力を加えないように安静にしていればしばらくすれば自然に治ります。歯を支える組織の損傷が多い場合は治るのに時間がかかり、歯周病が進行している二次性咬合性外傷はその歯は日々の食事すら担うことができないためなかなか治らない傾向にあります。
一次性咬合性外傷で歯や根にヒビが入る、割れるなど身体の回復限界を超えた損傷であれば自然に治ることはなく、ヒビや割れから内部に細菌が入り込めば感染を起こして歯茎が腫れることがあります。そうなってからでは遅いため検査をして状況を早く把握し対処する必要があります。

咬合性外傷で噛むと痛い時の治療法

2つのタイプに共通する治療法は、不適切な噛み合わせがあれば調整する、被せ物などの歯の高さが不調和であれば再製作することです。一次性咬合性外傷の歯軋り・食いしばり・噛みしめ癖による無理な力で発症した場合は、原因となっているこうした行為をやめることです。やめない限り痛みを取ることはできません。突き指をした時にその指を安静にするのと同じです。
しかしこの行為は無意識で行っているため、自分では気が付かないことが大半です。やめるためにはこの行為を行っている時に気づくことから始める必要があります。この文章をお読みになられている今、上下の歯同士が軽くでも接触していればこの癖を持っている可能性があるとお考え下さい。この無意識の上下の歯同士の接触が原因となって、数件の歯科医院で歯や歯茎に問題がないと言われたが歯や歯茎の痛みがあると来院される方もいらっしゃいます。
気付いたらやめる、しばらくするとまた無意識でしてしまうのでそれにまた気づく、そしてやめるを繰り返してやめている状態が癖になるまで続ける忍耐が大切です。 寝ている間は気づくことができないのでナイトガードと呼ばれるマウスピースの着用をお勧めいたします。
歯軋り・食いしばり・噛みしめ癖の詳細はこちらへ

被せ物や噛み合わせ不良で噛むと痛い

歯自身に問題がなくともその歯の噛み合わせに問題があれば噛むと痛い症状が出ることがあります。
歯並びがよくないことは噛み合わせに問題があることですので、原因となりえます。しかし一般的に多いのは被せ物などの治療を受けた後の噛むとでる痛みです。この両者に共通するのは特定の歯に強い力がかかる噛み合わせの不調和が起きていることです。
歯は髪の毛1本噛んでも感知できるほど敏感ですので、ほんのわずかな噛み合わせの不調和でも感じ取ります。この不調和(主に高く感じる)により、先にお話しした咬合性外傷を起こして噛むと痛くなります。
対処法としては、歯並びがよくない場合は矯正治療や被せ物などによる補綴治療、被せ物治療後に痛む場合は被せ物の噛み合わせの調整や再製作があります。程度や状況により対処法は変わってきますので、医院でご相談されるといいでしょう。

顎関節症で噛むと痛い

顎関節症は顎が痛い、口が十分開けられない、顎を動かすと音がするなどを主症状とする障害です。噛むという顎の動きで痛みが出ます。以前は歯の噛み合わせに原因があると考えられてきましたが、現在は心理的、社会的な因子も強く関わっていることがわかっています。また原因は、緊張や多忙、対人関係、硬いものの咀嚼、常時間のパソコン作業、歯ぎしりや食いしばり、姿勢など多因子に及びます。

顎関節症で噛むと痛い時の治療

顎関節症は多因子疾患のため、考えられる因子項目を解消していくことが必要です。痛みがある時は硬い食物を避ける、大きく口を開けない、長時間口を開けない、頬杖をやめる、猫背などの姿勢を正す、心理的な緊張状態をなくすなどの生活指導、肩や首やあごのストレッチやマッサージなどの理学療法、消炎鎮痛剤を服用する薬物療法、就寝時や痛みのある時には専用のマウスピースを装着するアプライアンス療法などがあります。あごの負担を軽減することが大切です。

噛むと痛い時に

歯科の多くの病気は初期では無症状で進むことがあり、また治療では元通りに回復することは困難なため、本来は痛みが起きる前に治療することが望ましいのです。痛みがある時点である程度病状が進行している可能性が高いとお考え下さい。痛みが出てからでは歯の削る量が増加したり、骨を多く失っていたりと、歯やその周りの組織の寿命を大きく損なってしまいます。痛みは体が危険を教えてくれる大事なサインです。今の行動が今後の歯の寿命に関わってきます。
こうした損失を避けるため、定期的な歯科検診やメンテナンスが必要だと当医院は考えています。

歯と歯茎のトラブル

噛むと痛い以外にも体が危険を教えてくれるサインがあります。
そのサインを見逃さなければ被害を小さくしまた治療を最小限に抑える事が出来ます。
今はなんとかごまかせても、今よりさらに悪化する前に治療することが大切です。

歯がしみる

歯が欠けた

歯が痛い

歯ぎしり・食いしばり・噛みしめ癖

歯と歯茎に問題がないのに出る痛み

歯茎から血が出る

歯茎が腫れた