歯茎から血が出る
歯茎から血が出る原因と治療法
歯茎が赤っぽい、フロス・糸ようじ・歯間ブラシ・歯ブラシを使うと毎回歯茎から血が出る、そんな場合には歯茎が炎症を起こしている可能性があります。炎症は細菌感染が起こっている証拠であり、放置すれば炎症の拡大や病状の進行を招いて、歯を失うなど回復不可能な状態になるリスクをはらんだ状態です。
歯茎からの出血は色々な病気から起こるため、その原因を早急に突き止めて治療することが今と将来の食生活のために重要になってきます。
目次
- 歯周病(歯槽膿漏)で歯茎から血が出る
- 虫歯で歯茎から血が出る
- 歯の詰め物や被せ物の不適合で歯茎から血が出る
- 根尖性歯周炎で歯茎から血が出る
- 歯の根が割れた、ヒビが入って歯茎から血が出る
- 親知らずや歯並びが悪くて歯茎から血が出る
- 外傷・ケガで歯茎から血が出る
- ビタミンC不足で歯茎から血ら出る
- 歯茎から出血するその他の原因
- 歯茎からの出血を防止する方法
- 歯茎からの出血を止める薬
歯周病(歯槽膿漏)で歯茎から血が出る
歯茎からの出血理由で最も多いのが歯周病です。歯周病は歯と歯茎の境目からの細菌感染です。歯茎が炎症状態になるため赤く出血しやすくなります。初期の歯肉炎では主な症状は歯茎からの出血ぐらいですが、歯周病が進行すると歯周炎になり、膿がでたり、噛むと痛い、歯がぐらつく症状が出て、重度になると歯を支えるあごの骨が溶けてなくなり、一度溶けてしまった骨は基本的に回復不可能です。そして最後には歯が抜け落ちる病気です。歯茎からの出血はそんな歯周病の初期症状ですので、その段階で治療すればその後の大きな損失を防ぐことができます。出血だけでなく痛みや腫れを伴う場合は歯周炎だとお考え下さい。できるだけ早く受診をされることをお勧めいたします。
歯周病(歯槽膿漏)で歯茎から血が出る時の治療
軽度の歯肉炎では適切な歯磨きで治ります。しかしそれ以上進行した歯周炎では治療が必要です。歯肉炎と歯周炎、見た目は同じような出血でも歯茎の奥で起こっていることに違いがあるため歯科医院で検査をお受けになられることをお勧めいたします。
歯周病治療の基本は細菌が多く住み着いている歯石やプラークの除去とクリーニング、クリーニング後の状態を日々維持するための的確な歯磨方法のご説明です。歯周病の程度や状況に応じてその他の治療を加えて行くことになります。歯周炎で痛みや腫れのひどい時には抗生物質などの内服薬も必要です。感染と炎症がなくなる状態まで患者さんと私達が協力しながら根気よく一緒に進めていくことが大切になってきます。
歯周病の詳細はこちらへ
虫歯で歯茎から血が出る
小さな虫歯では歯茎からの出血は起こりませんが、歯茎に近い場所に虫歯ができると虫歯の穴に食べ物が詰まったり歯ブラシの毛先が当たりにくくなり、どうしてもそこは不潔になります。不潔な場所は細菌が繁殖しやすいため、炎症が起きて歯茎が赤くなり出血する歯肉炎になりやすくなります。また虫歯の大小に関わらず、虫歯で開いた穴に食べ物が詰まって歯茎を圧迫して出血する場合もあります。
虫歯で歯茎から血が出る時の治療
虫歯で空いた穴をふさぐ治療により穴がなくなると清掃不良が解消するため、適切な歯磨きさえすれば歯茎から血が出ることはなくなります。しかしさほど虫歯の穴が大きくなくあまり症状がないためご本人には虫歯だけだと思われているケースにも細菌感染が歯の内部の神経にまで及んでいることがあります。この場合は根管治療が必要になります。
虫歯治療の詳細はこちらへ
歯の詰め物や被せ物の不適合で歯茎から血が出る
虫歯などにより失った歯質を回復し再度噛むために入れる歯の詰め物や被せ物の精度が劣り、歯とピッタリ合っていない場合には歯と被せ物との境目にプラークが溜まります。微細な境目にできた隙間であっても、顕微鏡でしか見ることのできない小さな細菌にとっては大きな住みかです。さらに歯の表面についたプラークは歯ブラシ等で容易に取り除くことができますが、この境目の隙間に入り込んだプラークの除去は非常に困難になります。この取り残されたプラークにより歯茎の炎症が起こるため歯茎は普段から赤っぽく・腫れぼったくなっており、歯ブラシや歯間ブラシなどの清掃道具が軽く触れるだけでその場所付近の歯茎から出血します。舌で境目を感じたり、フロスや糸ようじがその場所だけほつれたり切れたりする場合はこの状況が疑われるため要注意です。
対処法は原因となっている詰め物や被せ物を作り直すことで、丁寧な歯磨きで様子を見ることは問題の先延ばしにもならないことをご注意ください。
根尖性歯周炎で歯茎から血が出る
細菌が歯内部の神経に感染した後、歯の根の中を通過して根の先や顎の骨の中まで侵入した結果、歯周組織に炎症が起こります。その炎症が骨の外側の歯茎に及ぶと出血や腫れが出て、時には膿も出ることがあります。
根尖性歯周炎で歯茎から血が出る時の治療
出血と炎症の原因が歯茎でなく根の先や骨の中なのでいくら頑張って歯磨きをしても自然に治らないため、歯の内部の治療である根管治療が必要です。痛みや腫れ、出血の波があり、症状が一時なくなっても内部で感染はどんどん広がっていきます。根管治療による感染の拡大阻止ができなくなる限界を超えれば抜歯せざるを得ないため、症状だけで病気を判断されないことが重要です。
根管治療の詳細はこちらへ
歯の根が割れた、ヒビが入って歯茎から血が出る
歯ぎしりや硬いものを噛んだ、歯をぶつけたなど、歯に強い外力がかかると、特に神経がない歯はもろいため歯にヒビが入ったり割れたりすることがあります。そのヒビや割れ目からの細菌感染で歯茎から出血し腫れたり膿が出ることがあります。放置すると炎症は歯を支えているあごの骨まで溶かしますので早期の治療が必要です。
歯の根が割れた、ヒビが入って歯茎から血が出る時の治療
歯の根が割れたりヒビが入った状態は簡単に目では判断が付きません。さらにこの場合の炎症によるあごの骨の喪失は急激であることが多く、発見や治療が遅れると歯だけでなく骨まで多く失ってしまします。そうなればその後の噛む機能回復や手段に制限が発生することがあるため、検査による原因究明と治療を急ぐ必要があります。判断が遅れたため、一生入れ歯しか治療法がないケースを多く目にしています。残念ながらこうした場合は抜歯せざると得ないケースが大半です。歯茎の出血だけでなく腫れと痛みを伴うことが多いのが特徴です。
抜歯後の治療の詳細はこちらへ
親知らずや歯並びが悪くて歯茎から血が出る
歯並びが悪い場所や斜めに生えた親知らず、まだ完全に生えていない親知らず、不適切な形をした人工の被せ物などは歯ブラシの毛先がしっかり当たりにくい場所です。そのため歯茎が不潔になり次で述べる歯肉炎になりやすく、炎症で出血が起こります。
親知らずや歯並びが悪くて歯茎から血が出る時の治療
歯並びや親知らずの程度によっては、その状態に適した歯みがき方法を取り入れて様子を見ることをお勧めする場合があります。その他は歯並びの修正は矯正治療、不適切な人工の被せ物は作り直し、親知らずの抜歯などが一般的です。
人工の被せ物の詳細はこちらへ
親知らずの抜歯の詳細はこちらへ
外傷・ケガで歯茎から血が出る
転倒などによる外傷(怪我)、食事中に頬を噛んだ、魚の骨など硬いものや、とんかつの衣のように薄くて尖った食べ物による傷などにより歯茎が傷を負った場合に出血します。頻繁に頬や舌に傷ができる場合は、歯並び不良や人工歯の形態不良、人工歯の不適合などがある可能性があります。
小さい傷であれば清潔にして様子をみればいいでしょう。しかしケガや外傷など大きな傷は細菌感染を起こしやすいことと、傷口が開くことがあるため、消毒と傷口を縫い合わせる場合もありますので歯科医院の受診をお勧めいたします。
ビタミンC不足で歯茎から血ら出る
身体のタンパク質の30%が血管、骨、軟膏、皮膚などを作っているコラーゲンです。コラーゲンがそれらの組織を丈夫にし柔軟性を与えています。ビタミンCはこのコラーゲンを作る過程で必要不可欠のビタミンですが、不足すると全身から出血しやすくなり最後には死亡することもあります。
ビタミンC不足状態が数週間から数ケ月続くと、簡単に出血を起こしやすくなる壊血病になります。栄養不足や生鮮食品を食べられない船員など過去の病気だと思われていましたが、近年日本を含め食べ物の豊富な先進国での発症も見られています。歯茎からの出血が特徴的ですが医科での対応となります。
歯茎から出血するその他の原因
唾液には抗菌作用、口の中を洗い流す自浄作用、粘膜を修復する作用があります。唾液が外界から侵入する細菌から口を守り、清潔を保ち、傷を修復して粘膜を健康に保っているのです。ところが鼻疾患や口で息をする癖(口呼吸)があると空気の流れにより唾液を蒸発させこうした作用が減弱してしまいます。そのため直接的な原因ではありませんが歯茎の炎症による出血を起こしやすくなります。ドライマウスと呼ばれる唾液の分泌量が少ない状態でも同じです。
また女性のホルモンバランスの乱れによる歯茎の出血、免疫抑制剤・抗てんかん薬・カルシウム拮抗薬の副作用である歯茎の増殖や出血、がんを含めた腫瘍や全身疾患でも歯茎の出血を伴うものもあります。そして糖尿病のようにその疾患では直接出血しないものの、歯周病と関連する疾患は間接的に出血に関わることがあります。こうした疾患では主治医との医療連携が必要な場合がありますが、基本的にはプラークコントロールが必要になります。
歯茎からの出血を防止する方法
ストレス、疲労、寝不足など精神的・肉体的なネガティブ要因により免疫力低下が起きると歯茎のトラブルが起こることがあります。免疫力低下により歯周病菌などの悪玉菌の台頭を抑え込めなくなることと、そうしたネガティブ要因ではお口のケアが後回しになる傾向があるからです。出血が一時的な場合は要因の解消により回復しますが、頻繁に起きる場合は普段が発病ギリギリ手前である可能性がありますので、日頃から口の健康状態を高めておく必要があるでしょう。
また力を入れ過ぎた過度の歯ブラシや歯間ブラシの歯磨き、フロスの勢いがつき過ぎて歯茎を傷めた、などは原因となっている行為をやめて注意をすれば自然に治ります。歯周病が原因の場合は初期の歯肉炎であれば適切な歯みがきで様子を見てもいいでしょうが、歯周炎であれば治療が必要です。しかしこの二つの判別は見た目だけでは困難であるため自己判断されず、検査をお受けになられることをお勧めします。
要約すると、これまでご説明した歯茎から血が出る原因を作らないことが最大の予防法であり、出血した場合には早くその原因を特定し対処をすることに尽きると言えます。
歯茎からの出血を止める薬
止血薬などを使って出血を止める意味はないと考えます。それで病気が治る訳ではないため根本的な解決にはならず、病気が進行するのを待っているだけになるからです。原因があっての出血ですから、原因の治療をすれば出血は自然に止まります。
歯茎からの血が出る時に
歯茎から血が出るということは血管が破れているということです。血管が破れるほどの傷、炎症、感染などがあるということです。体を覆っている皮膚であれば自然治癒することもありますが、口の中は常に唾液で濡れていて、細菌も豊富な感染を起こしやすい環境です。出血が病気によるものであればなおさら自然治癒は望めません。いち早く原因を特定して治療することをお勧めいたします。
歯と歯茎のトラブル
歯茎から血が出る以外にも体が危険を教えてくれるサインがあります。
そのサインを見逃さなければ被害を小さくしまた治療を最小限に抑える事が出来ます。
今はなんとかごまかせても、今よりさらに悪化する前に治療することが大切です。