40代男性「奥歯の詰め物が取れた。歯が欠けた」噛みしめ・食いしばりによる極度の歯の摩耗を改善した症例

2024.09.09

治療前

今回治療の9年前の正面の状態です。

今回治療の9年前の上顎の状態です。多少の摩耗は見られますが、今回ほどではないことがわかります。

同じく9年前の下顎の状態です。左下奥歯を中心に奥歯全体に摩耗が多少見られます。

治療中

今回治療前の正面です。9年前と比較して噛みしめ・食いしばりによる上の前歯の先端が摩耗で薄くなり、薄くなった歯質が欠けていびつな形をしています。歯全体の摩耗により噛み合わせも低くなり、上の前歯が下の前歯に被る程度が多くなっています。嚙み合わせが狂ってきたことを如実に物語っています。

今回治療前の上顎ですが、9年前よりほとんどの歯に摩耗が見られ、歯の形が変わってきています。銀歯は歯より硬くあまり摩耗しないため、歯の摩耗が進み銀歯が浮き上がっています。これが銀歯が取れた一因です。

9年前も下顎は摩耗が見られましたが、今回はさらにそれが加速しており、摩耗により厚みが薄くなった歯質が欠け始めています。このままでは噛むことはおろか歯を失う危険性があります。

治療後

摩耗により上顎前歯の厚みが薄くなった部分は裏側から人工物を貼り付けて厚みを持たすことができますが、それでは嚙み合わせが変ってしまいます。現状の嚙み合わせを維持するため、上顎前歯の治療は見送りました。

すり減った部分に詰め物や被せ物を入れて摩耗が加速することを防止しました。

下顎も同様に詰め物と被せ物で噛み合わせを維持し、噛める能力の向上を獲得することができました。虫歯になりやすい状態から抜け出ることができたでしょう。

その他

今回治療の9年前のレントゲンです。奥歯を中心に歯の噛む面がすり減って平らになりつつあります。

奥歯を中心に摩耗が著しく9年前に噛む部分が平らだったものがさらに進行して凹んでいることがわかります。これだけの摩耗が起きるほどの慢性的な強い力にも関わらず、歯周病はあっても骨のダメージはそれほど大きくないのが唯一の救いです。

年代と性別 40代・男性
はじめのご相談内容 奥歯の詰め物が取れた、歯が欠けたとお見えになられました。
診断結果 拝見すると奥歯だけでなく前歯もお口全体の歯が極度の摩耗を起こしていました。
長年たくさんの方のお口を拝見していますが、これほど多くの歯がここまで摩耗しているケースはあまり記憶がありません。
9年前にお越しになられた時の写真と比べてみてもその間にかなり摩耗していることがわかります。
食いしばりや歯ぎしりなど上下の歯を接触させて顎を動かす癖が日常的に行われていることが明確です。
また絶え間なく歯に力をかけ続けていることから、上下左右の奥歯に進行した歯周病が見られました。
これ以上歯の摩耗が続くと薄くなった歯質が欠けて歯が割れる、歯を虫歯から守る役割のあるエナメル質が摩耗でなくなっており弱い歯質である象牙質が口の中に露出しているため虫歯に非常になりやすい、さらに摩耗によりどんどん噛み合わせが狂ってくるなど現状ではお判りにならないであろうこれからの多くの問題をはらんでる状態だとご説明しました。
今回歯が欠けたのは摩耗により歯が薄くなり割れたためで、詰め物が取れたのも詰め物が接着する歯質が摩耗してなくなったためと歯が摩耗するほど慢性的な強い力が詰め物に加わったためだと推測できます。
行った治療内容 理想は摩耗する前の状態に改善することですが、すでに狂ってしまった噛み合わせに慣れておられることと、今ある全ての歯の噛み合わせを期間をかけて少しずつ改善し、それに合わせてすべての歯の被せ物や詰め物などで治療を行う必要があるため、ご相談の上期間と費用面から見送ることになりました。
現状の歯を長持ちさせるために歯周病の治療と並行して現実的な二つのご提案をしました。一つは摩耗により現在と将来起こるであろう問題を回避することです。二つ目はこれ以上摩耗することに抵抗することです。
具体的には摩耗して欠けた部分やえぐれて穴があいた部分を人工的な詰め物や被せ物で覆い、現在の噛み合わせを維持する方法です。
奥歯のあまり目立たない歯は銀歯、目立つ歯には強度面からジルコニアにすることをご希望され、右上5・6・7番、左上5番、左下6・7番、右下7番に銀歯を、右上4番、左上4番、左下4・5番、右下4・5番にジルコニアを装着しました。理想を言えば食いしばり等に最も抵抗できるのは金合金の人工歯ですが、費用の面から奥歯(大臼歯)は銀歯、その手前の小臼歯は白い歯がいいとのご希望でジルコニアに決まりました。
治療中には、噛み合わせをあまり変えないこと、詰め物や被せ物が取れやすい摩耗で短くなった歯、歯を削る量を最小限にすること、場合により相反する項目の最大公約数を模索しながら仮の歯に置き換え、患者さんと歯科医双方が納得する噛み合わせを仮歯でつくり、それを何回かエリヤに分けて最終的な人工歯に置き換えていく方法をとりました。(治療後の画像)
このケースのおおよその治療期間 約6か月
おおよその費用 310,330円(仮歯を含む13本+保険の一部負担金)
現在の様子 極力当時の噛み合わせを変化させないことに留意し、すり減った歯に人工歯を装着することで噛める面積が飛躍的に増えました。
治療後は食生活や日常において問題なく機能しています。
治療のリスク ・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、ジルコニアが割れる可能性があります
・装着に際し、天然歯を削る必要があります
クリニックより 日常的に日中に上下の歯同士が接触している可能性が高く、それをやめるためのヒントなどもお話ししました。
また本来はナイトガードと呼ばれるマウスピースを作製し夜間装着することが理想ですが、ご希望により中止しております。
人体で最も硬く丈夫な歯をこれだけ摩耗させる習慣をお持ちのため、今回の治療の詰め物や被せ物が外れる、壊れる、残ったご自身の歯が摩耗するリスクがあることをご説明しました。
歯ぎしり・食いしばり・噛みしめ癖の詳細は下記をご覧ください。
歯ぎしり・食いしばり・噛みしめ癖