30代男性「奥歯の歯茎が痛い。前歯の歯と歯茎の境目が茶色くなっている」定期健診とメンテナンスで30年間歯を維持した症例

2024.06.03

治療前

食いしばりと歯ぎしりをされているため、歯の先端の摩耗と歯茎に接する歯の付け根にえぐれや初期の虫歯が見られます。

画面左側の犬歯(右上3番)の先端は食いしばり等により削れてなくなっており、他の前歯も先端が摩耗して表面のエナメル質がなくなり内部の象牙質が露出しているため茶系の横筋が見られます。

下の前歯の先端も上顎同様摩耗しています。食いしばり等の過剰な力を慢性的に加える癖をお持ちの方には本来は銀歯は適していません。硬すぎるからです。

治療中

初回の治療が終了し、4年後の歯科検診時の状態です。食いしばり等のため歯の付け根に詰めてあったプラスチックが一部取れています。

前回より摩耗程度は大きく変化していません。

上顎同様大きな変化は見られません。

治療後

初回から11年後です。食いしばり等の癖がコントロールできていないようです。再度歯の付け根のプラスチックの詰め物が外れ虫歯になっています。

前回の写真と比べても歯の先端の摩耗は進行しています。食いしばり等のコントロールが不十分であることに抵抗するため、可能な限り多くの歯の摩耗のスピードを調和させる目的で虫歯が見つかった歯の治療には金合金を用いました。画面左端の右上7番、画面右端から2番目の左上6番が金合金に変っています。

銀歯は硬すぎるためお口全体の摩耗のバランスが崩れます。摩耗の調和を取るため虫歯になった歯の治療で、画面左一番奥の右下7番、画面右端の左下7番の銀歯が金合金の被せものに変っています。

その他

最初にお見えになられてから30年後です。食いしばり等の癖と患者様と一緒に戦っておりますが、30年間歯は失っていません。

30年と長い年月の中で歯科健診で時折初期の虫歯が見つかり、その度に奥歯は虫歯になりにくく耐久性がありお口全体の摩耗のバランスを崩さない金合金に交換してきました。

当初30代であったこの方も今は60代となられましたが、歯周病はコントロールできています。今後も歯科健診とメンテナンスでご一緒に維持して参りたいと考えています。

年代と性別 30代・男性
はじめのご相談内容 左上奥歯の歯茎が痛く、前歯の歯と歯茎の境目に茶色く変色した虫歯があるので治療をしたいとお見えになられました。
診断結果 拝見すると左上奥歯には特段の異常がなく、食いしばりと歯ぎしりの癖をお持ちだったことが痛みの原因だと判断しました。
また左上側切歯と犬歯(左上2番と3番)のと歯茎の境目がえぐれて変色が見られました。この場所がえぐれるのは食いしばりと歯ぎしりにより歯を横方向にこすり合わせる方によく見られます。
横方向の強い力の応力がこの場所に集中するため歯にヒビが入り欠けてえぐれてきます。右上糸切歯(右上3番)の先端が摩耗していびつな形をしているのもこの癖が原因です。
食いしばりと歯ぎしりをコントロールすることが大切だと考えました。
行った治療内容 虫歯治療をしてもこれらの癖をやめない限り再度えぐれてくることをご説明しました。
この癖をお持ちの方は日常的に上下の歯同士が接触していることがあるため、日中の上下の歯同士の接触を避けて1mmでも歯同士を離すことと、ナイトガード(マウスピース)の装着をお勧めしました。
えぐれた前歯には保険のプラスチックをつめて虫歯の進行を止めました。歯周病は数か所散見されましたが、程度は軽く歯石除去などの初期治療と自宅でのケアの方法をお話ししただけで改善しました。初回の治療は1か月ほどで終了しました。(治療中画像1~3)

その後は定期健診にお見えになられ、歯周病は歯石除去などの初期治療で継続的に良好に維持できていらっしゃいます。その際時折緩和したものの継続して食いしばり等の癖があるため歯の付け根に詰めたプラスチックが取れたり虫歯になるなどの虫歯治療を行いました。(治療後画像1~3)
奥歯のかみ合わせ部分に関わる虫歯治療の際には奥歯は歯ぎしり等の癖に適している金合金の詰め物をお勧めし、30年間に何本かが銀歯から金合金に代わっています。金合金は歯と同じ硬さであるため他の歯の摩耗に追随してお口全体の噛み合わせバランスを崩さないためです。銀歯は硬すぎてこの調和を崩してしまい、その歯に強い力がかかり虫歯や歯周病、ヒビ割れなどが起こりやすくなります。
このケースのおおよその治療期間 初回は10か月間かかりましたが、その後は検診の度に約1か月ほど、治療が必要な時は約2~4か月ほど要しました。
30年間で19回定期健診やメンテナンス(クリーニング)で来院されました。
おおよその費用 保険の一部負担金+692,250円(30年間で金合金の詰め物8本、除菌治療4本、仮歯8本を含む)
現在の様子 治療後も食生活や日常の問題はみられません。(その他画像1~3)今後も定期健診とメンテナンスでご一緒に歯を守り続けてまいりたいと考えています。
治療のリスク ・治療中に痛みを伴う場合があります
・治療後に正しい歯磨きやメンテナンスを怠ると、虫歯が再発する場合があります
・治療後は神経が過敏になっているため、痛みが生じる場合があります
クリニックより 30年間拝見している方ですが当初から上顎の糸切歯が削れて変形するほど食いしばりと歯ぎしりが強い反面、幸いにも骨の吸収はほとんどなく歯周病の問題はあまり出ていらっしゃいません。
現状のご説明や起きた問題の原因などのお話を容易にご理解される理知的な方でしたので、日々のケアにも積極的に取り組まれていることがお口を見て想像できました。
こうした前向きな姿勢により毎回の定期歯科検診やメンテナンス(クリーニング)を継続してお受けいただくことができたことが、時折小さな虫歯を早期に発見し治療できることにつながっています。

当時から今まで30年間 1本も歯を失うことなく維持されており、また歯周病も問題がないレベルを維持されていらっしゃいます。そのため日常生活と食生活への障害は全くなく、お口の中の健康状態は非常に良好です。
詳細は下記をご覧ください。
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